不安解消の第一歩 夫婦で始める毎月の収支共有ガイド
夫婦がお金について話し合うことは、将来に対する漠然とした不安を和らげ、お互いの信頼関係を深める上で非常に大切です。特に、日々の生活の基盤となる「毎月の収支」を夫婦で正確に把握し、共有することは、お金の話を始める上での大切な第一歩となります。
なぜ毎月の収支共有が必要なのか
夫婦で生活を共にしている場合、お互いの収入や、何にどれくらいお金を使っているかを詳細に把握できていないケースがあるかもしれません。お互いが別々に管理している、あるいは特定のどちらか一方が主に管理している場合、家計全体のお金の流れが見えにくくなります。
お金の流れが見えにくい状態は、「貯金は増えているのだろうか」「このままで将来大丈夫だろうか」といった漠然とした不安の大きな原因となり得ます。毎月の収入に対して支出がいくらあり、いくら貯蓄や投資に回せているのかを明確にすることで、不安の正体を知り、具体的な対策を立てるための基盤ができます。これは、教育費や老後資金といった将来の目標設定にも不可欠な情報です。
夫婦で収支を共有することは、単にお金の話をするだけでなく、お互いの働き方や価値観、将来への考え方を理解し合う機会にもなります。
収支共有を始める前の準備
話し合いをスムーズに進めるためには、いくつかの準備をしておくことが望ましいです。
まず、落ち着いて話せる時間と場所を設定しましょう。休日など、お互いにリラックスできるタイミングを選び、カフェや自宅のリビングなど、邪魔が入らない場所を確保します。この話し合いは、どちらかを責めたり、一方的に不満をぶつけたりする場ではありません。お互いの現状を理解し、協力して将来を考えるための大切な機会であることを認識し合いましょう。
次に、共有したい情報の整理を始めます。これは、話し合いの前に各自が行っておくことで、話し合いがより効率的に進みます。
- 収入: 手取りの月収、ボーナスの額、副収入など、具体的な金額を把握します。
- 支出: 毎月必ずかかる固定費(家賃または住宅ローン、光熱費基本料、通信費、保険料、サブスクリプションサービス利用料など)と、毎月変動する変動費(食費、日用品、娯楽費、交際費、医療費など)をリストアップしてみます。過去数ヶ月分の支出を振り返ると、平均的な金額が見えてきます。
家計簿アプリやスプレッドシートなどを使うと、情報の整理や把握がしやすくなります。最初から完璧を目指す必要はありません。まずは大まかな項目からで構いませんので、把握できる範囲で整理してみましょう。
具体的な収支共有の方法
準備ができたら、実際に夫婦で情報を持ち寄り、共有します。
- 収入の確認: お互いの手取り収入、その他収入源について、具体的な金額を共有します。共働きの場合は、それぞれの手取り額と合算した世帯収入を確認します。
- 会話例: 「今月の手取りはこれくらいでした。ボーナスは〇月と△月にこれくらいの予定です。」 「私の今月の手取りはこれです。他に定期的な収入は特にありません。」 「そうすると、二人合わせた今月の収入は約〇〇円ですね。」
- 支出の確認: 整理した固定費と変動費のリストを見ながら、それぞれの項目について話します。
- 会話例(固定費について): 「固定費は、家賃が△△円、光熱費基本料が合わせて〇円、通信費が一人あたり□円だから、二人で□□円ですね。」 「保険料は年間でこれくらい支払っていて、月あたりにすると約××円です。」 「サブスクは私がこれとこれで、あなたがこれですね。合計で◇円くらいです。」
- 会話例(変動費について): 「食費は先月が多めでしたが、平均すると月あたり約〇〇円くらい使っているようです。」 「私の交際費は今月少し予算オーバーしてしまいましたが、来月は調整しようと思います。」 「日用品はまとめて買うことが多いから、月によってばらつきがありますね。」
- 収支の差額を確認: 収入の合計から支出の合計を差し引いて、毎月どれくらいのお金が残るのか、または不足するのかを確認します。これが、貯蓄や投資に回せる可能性のある金額となります。
- 会話例: 「今月の収入が〇〇円で、支出が△△円だったから、差し引きで◇◇円が残る計算になりますね。」 「思ったより残っているね。これを貯蓄に回せているか確認してみよう。」 「先月は少し赤字になってしまったようです。何に多く使ったか見てみましょうか。」
共有時の話し方のコツ
お金の話は感情的になりやすい側面も持ち合わせています。冷静に、前向きに進めるためのコツがあります。
- 事実に基づいて話す: 「あなたのお金遣いが荒い」といった感情的な表現ではなく、「この項目の支出が、想定していたよりも〇円多かったですね」のように、具体的な数字や事実に基づいて話します。
- 「確認」の姿勢で臨む: 相手の支出に対して疑問を感じても、「これは何に使ったの?」と問い詰めるのではなく、「この項目の支出について、少し詳しく教えてもらえますか?」のように、理解しようとする姿勢で尋ねます。
- お互いの価値観を尊重する: 必ずしもすべての支出項目について意見が一致するわけではありません。お互いが大切にしていることや、お金の使い方に対する価値観の違いがあることを認め合った上で、家計全体としてどのように調整していくかを話し合うことが大切です。
- ポジティブな言葉を選ぶ: 改善点が見つかった場合でも、「もっと節約しないとダメだ」と否定的に話すのではなく、「この部分を見直せば、毎月あと〇円貯蓄に回せそうだね。将来のために頑張ってみようか」のように、目標達成に向けた前向きな言葉を使うと、お互いのモチベーションにつながります。
もし、話している途中で感情的になりそうになったら、一度深呼吸をする、休憩を挟む、あるいは「少し頭を冷やしてからまた話しましょう」と一時中断することも有効な方法です。
共有した収支情報をどう活用するか
毎月の収支を夫婦で共有することで、様々なメリットが生まれます。
まず、漠然とした不安の原因が具体的に見えてきます。「なんとなくお金がない気がする」という状態から、「毎月〇円は貯蓄に回せているけれど、目標額には少し足りない」「固定費が高いから見直しを検討しよう」のように、具体的な課題や改善点が明らかになります。
次に、将来の貯蓄目標や投資計画を立てるための具体的な金額設定が可能になります。「年間〇〇円貯めたいから、毎月△△円を貯蓄に回そう」「老後資金として〇〇円を目標にするためには、毎月これくらいのペースで資産形成を進める必要がある」といった具体的な目標が立てられるようになり、夫婦で協力してその目標に向かうモチベーションが高まります。
そして、一度共有した収支は、定期的に見直すことが重要です。生活状況の変化(昇進、転職、子どもの成長など)によって収入や支出は常に変動します。3ヶ月に一度、半年に一度など、夫婦で決めたタイミングで再び収支を確認し、必要に応じて計画を修正していくことで、家計を健全な状態に保つことができます。
まとめ
夫婦で毎月の収支を共有することは、将来への不安を具体的に把握し、解消するための第一歩です。お互いの収入と支出を知り、家計全体のお金の流れを「見える化」することで、漠然とした不安は具体的な数字に変わり、どのように行動すれば良いかが明確になります。
初めて収支を共有する際は、完璧を目指す必要はありません。まずは大まかなことからで構いませんので、リラックスした雰囲気の中で、お互いを尊重しながら話し合ってみてください。この一歩を踏み出すことが、夫婦でお金の不安を解消し、将来に向けて協力し合う関係を築くための大切なきっかけとなるでしょう。