夫婦で「隠れた借入」をなくす リストアップから返済計画まで具体的な話し合い方
お金について夫婦で正直に話し合うことは、将来の安心につながる大切な一歩です。特に、住宅ローンや自動車ローン、教育ローン、奨学金、さらにはカードローンやキャッシングなど、様々な借入(負債)について、夫婦間で状況が十分に共有されていないケースが見受けられます。お互いの借入状況を把握していないことは、家計全体の把握を難しくし、漠然とした不安の原因となることがあります。
この課題を解消するためには、まず夫婦で現在の借入状況を「見える化」し、具体的な返済計画について話し合うことが有効です。ここでは、借入について夫婦で話し合うための具体的なステップと、話し合いを円滑に進めるためのヒントをご紹介します。
なぜ夫婦で借入の話が必要なのか
借入は、将来の家計に影響を与える重要な要素です。収入に対してどれくらいの借入があるのか、毎月の返済額はいくらなのかを夫婦で共有していないと、効果的な家計管理や将来設計が難しくなります。
例えば、一方が把握していない借入があると、想定外の支出が発生したり、計画していた貯蓄ができなかったりする可能性があります。また、万が一のことが起こった際に、残された家族が借入状況を把握できず困惑するリスクも考えられます。
夫婦で借入について正直に話し合うことは、お互いの経済状況への理解を深め、協力して家計を管理していくための信頼関係を築く上で非常に重要です。
借入について話し合うための準備
話し合いを始める前に、まずは各自で現在の借入状況を整理してみましょう。以下の項目について、可能な範囲でリストアップしてみてください。
- 借入の種類: 住宅ローン、自動車ローン、教育ローン、奨学金、カードローン、キャッシングなど
- 借入先: 金融機関名や会社名
- 当初の借入額: はじめに借りた金額
- 現在の借入残高: 現時点で返済が残っている金額
- 毎月の返済額: 毎月いくら返済しているか
- 返済期間: あと何年返済が続くか
- 金利: 適用されている金利(固定金利か変動金利かも含めて)
これらの情報を集めることで、現在の借入状況が具体的に把握できるようになります。
具体的な話し合いのステップ
リストアップができたら、夫婦でテーブルを囲み、お金の話を始めましょう。話し合いをスムーズに進めるために、以下のステップを参考にしてください。
ステップ1: 話し合いの場を設定する
お互いが落ち着いて話せる時間と場所を確保することが大切です。食事の後や週末など、リラックスできるタイミングを選びましょう。事前に「少しお金の話をしたいんだけど、いつ都合がいい?」のように声をかけておくことで、相手も心の準備ができます。
ステップ2: 収集した情報を共有する
リストアップした借入情報を正直に共有します。一方的に情報を開示するのではなく、「私の借入状況はこうなっているよ」「あなたの状況も教えてもらえる?」のように、お互いにオープンな姿勢で臨むことが重要です。
例えば、
夫:「僕の住宅ローンは、残高があと〇〇円で、毎月〇〇円返済しているんだ。金利は〇〇%だよ。」 妻:「私は奨学金があと〇〇円残っていて、毎月〇〇円払っているよ。あとは、前に車を買った時のローンが〇〇円かな。」
このように、具体的な数字を共有することで、夫婦全体の借入状況が見えてきます。
ステップ3: 借入の現状について理解を深める
共有した情報をもとに、お互いの借入について理解を深めます。
- それぞれの借入の目的は何だったのか
- なぜその借入を選択したのか
- 返済についてどのような認識を持っていたか
これらの背景を知ることで、相手の状況や考え方を理解しやすくなります。
夫:「この奨学金は、大学時代の学費に使ったんだね。大変だったでしょう。」 妻:「うん、でもおかげで卒業できたから。そっちは、この住宅ローンを組む時、金利タイプですごく悩んだって言ってたね。」
相手の過去の選択や苦労に寄り添う姿勢を見せることで、話し合いがより建設的になります。
ステップ4: 今後の返済計画について話し合う
現在の借入状況が把握できたら、今後の返済計画について話し合います。
- 毎月の返済額は家計にどれくらい負担になっているか
- 繰り上げ返済は可能か、また行うか
- 借り換えを検討するか
- 借入がある状態で、今後どのようなライフイベント(住宅購入、教育、老後など)があるかを考慮し、返済とのバランスをどう取るか
具体的な目標設定があると、話し合いはより前向きに進みます。例えば、「〇年後までに、住宅ローン以外の借入は完済したいね」といった共通目標を持つことも有効です。
妻:「毎月の返済額を合計すると、結構な金額になるね。貯蓄にも回したいから、少し見直せないかな?」 夫:「そうだね。ボーナスで繰り上げ返済を検討してみる?それとも、もう少し低い金利のローンに借り換えられるか調べてみる?」
このように、具体的なアイデアを出し合い、現実的な計画を立てていくことが重要です。
話し合いを円滑に進めるためのヒント
借入を含むお金の話は、時に感情的になりやすいテーマです。以下のヒントを参考に、穏やかに話し合いを進めましょう。
- 責めるのではなく、理解する姿勢で: お互いの借入状況に対して、過去の選択を責めるのではなく、「これからどうしていくか」という未来に焦点を当てましょう。
- 正直さと透明性を大切に: 小さな借入でも隠さずに正直に話すことが、信頼関係を築く上で不可欠です。
- 一度で全てを決めようとしない: お金の話は一度で全てが解決するわけではありません。まずは情報を共有し、大きな方向性を話し合うことから始めても良いでしょう。必要に応じて、何度かに分けて話し合いの場を持ちましょう。
- 外部の専門家も活用する: 借入の状況が複雑な場合や、最適な返済方法が分からない場合は、ファイナンシャルプランナーなどのお金の専門家に相談することも一つの方法です。第三者の客観的な意見を聞くことで、冷静に判断できることがあります。
まとめ
夫婦でお互いの借入状況を正直に共有し、具体的な返済計画について話し合うことは、家計の透明性を高め、将来の漠然とした不安を和らげる上で非常に有効です。借入という「負債」について話し合うことは、一見ネガティブに感じられるかもしれませんが、これは夫婦で協力して将来の安心を築くための前向きなステップです。
まずは、それぞれの借入をリストアップすることから始めてみてください。そして、お互いを尊重し、理解し合う姿勢で話し合いに臨みましょう。借入について夫婦で向き合うことで、家計全体をより良く管理し、将来に向けた具体的な計画を立てられるようになるはずです。この話し合いが、夫婦の絆を深め、より安心して暮らせる未来につながることを願っています。