夫婦でお金の使い方・貯め方の「違い」を理解し、未来への共通目標を見つける話し合い
夫婦のお金、なぜ価値観の違いが生まれるのか
夫婦でお金について話そうとすると、どうも話が噛み合わない、あるいは避けがたい空気になってしまう。その原因の一つに、お互いの持つ「お金に関する価値観」の違いがあります。
お金の使い方や貯め方に対する考え方は、育ってきた環境やこれまでの経験、あるいは性格によって大きく異なります。たとえば、将来への備えを重視して堅実に貯蓄したいと考える方もいれば、今を楽しむことや経験にお金を使うことを大切にしたいと考える方もいます。どちらの考え方が正しい、間違っているということはありません。お互いがそれぞれの価値観を持っており、それが自然なことです。
しかし、この価値観の違いを理解せずにいると、夫婦間のコミュニケーションにおいて、思わぬすれ違いや摩擦を生む原因となります。「なぜ分かってくれないのだろう」「どうして無駄遣いするのだろう」といった感情は、話し合いをより難しくしてしまいます。
夫婦でお金の話を円滑に進め、将来への漠然とした不安を具体的な安心に変えるためには、まずこの価値観の違いが存在することを認め、お互いの考え方を理解しようと努めることが第一歩となります。そして、その違いを踏まえた上で、夫婦として同じ方向を向くための「共通目標」を見つけることが、お金に関する前向きな話し合いには不可欠です。
価値観の違いを理解するための話し合い方
夫婦間のお金の価値観の違いを理解するためには、感情的にならず、落ち着いて話し合う時間を持つことが大切です。お互いの考えを否定せず、まずは「聞く」姿勢を心がけましょう。
1. 話し合いの場と雰囲気を作る
お金の話はデリケートになりがちです。休日や夜など、時間に余裕があり、リラックスできる環境を選びましょう。例えば、食後のお茶を飲みながら、あるいは散歩をしながらなど、普段の家事や仕事から少し離れた時間帯や場所で行うのも良い方法です。
切り出し方としては、「最近、私たちのお金の使い方について、お互いがどう考えているのか話してみたいと思って」「将来のために、少しずつお金の管理について整理していきたいんだけど、一緒に考えてもらえるかな」のように、穏やかで相手への配慮が感じられる言葉を選ぶと、受け入れられやすくなります。
2. お互いの「お金ヒストリー」を聞き合う
なぜ今の価値観を持つようになったのか、その背景にある経験を共有してみましょう。
- (例)質問者: 「小さい頃、うちは『今使えるお金は楽しんで使おう』っていう考え方だったんだけど、〇〇さんの家はどうだった?」
- (例)回答者: 「うちはどちらかというと、将来のために貯蓄することが大事だって言われてたかな。だから、自然と無駄遣いはしないように気をつけるようになったかも。」
このように、育った環境や過去の経験、あるいは大きな買い物をした時の考え方などを話すことで、「なぜ相手がそのような考え方をするのか」の理解につながります。自分の価値観が絶対ではないことを認識し、相手の考え方の根底にあるものを知ることが大切です。
3. 具体的な「使い方」「貯め方」について話す
漠然とした話ではなく、具体的なお金の使い道や貯蓄の目的について話し合ってみましょう。
- (例) 「私は、年に一度は少し贅沢な旅行に行きたいと思っていて、そのために毎月〇円くらい貯めたい気持ちがあるんだけど、〇〇さんはどうかな? お金を使うなら、どんなことに使いたい?」
- (例) 「将来の教育費のことも考え始めると、不安になることがあるんだ。毎月いくらくらい貯蓄に回せたら安心できるか、一緒に考えてみない?」
このように、自分の考えや希望を具体的に伝えつつ、相手の考えを尋ねる形で進めます。「〜すべき」「〜はやめるべき」といった指示や否定的な言葉遣いは避け、「私はこう考えている」「〇〇について、どう思う?」というように、「私」を主語にした伝え方を心がけましょう。
4. 感情的になった場合の対応
話し合いの中で、意見が対立したり、過去の不満が思い出されて感情的になりそうになったりすることもあるかもしれません。そのような時は、一度話し合いを中断することも必要です。
- (例) 「ごめん、少し冷静に考えたいから、この話は一度中断しても良いかな。〇時間後にまた話せる?」
- (例) 「今、少し感情的になってしまいそうだから、休憩させてください。」
時間を置いて落ち着いてから再開するか、改めて別の日に話し合いの機会を設けるようにしましょう。感情的になったとしても、相手の人格を否定するような言葉だけは避けるように注意が必要です。
違いを乗り越え、未来への共通目標を見つける
お互いの価値観の違いを理解できたら、次はその違いを乗り越え、夫婦として共有できる「未来の目標」を見つけるステップです。
1. 夫婦で大切にしたい「未来」を語り合う
お金の話だけでなく、将来どんな生活を送りたいか、どんなことに価値を置きたいかなど、夫婦の夢や希望について語り合いましょう。
- (例) 「将来は、郊外で庭のある家に住みたいね。」
- (例) 「子供には、好きなことを思いっきり学べる環境を与えてあげたい。」
- (例) 「二人の趣味のために、年に数回は旅行に行ける余裕が欲しい。」
- (例) 「老後は、金銭的な不安なく、のんびり暮らしたいね。」
このような未来のイメージを共有することで、「何のために」お金を管理し、貯蓄するのかという共通の目的が見えてきます。これが、価値観の違いを調整する上での羅針盤となります。
2. 共通目標を具体的に設定する
共有した未来のイメージを実現するために、具体的なお金の目標を設定します。
- いつまでに、いくら必要なのか(例:5年後の住宅購入の頭金として500万円、15年後の教育資金として〇〇円など)。
- 短期的な目標(例:1年後の旅行資金20万円)と、長期的な目標(例:20年後の老後資金〇〇円)の両方を設定すると良いでしょう。
目標が具体的であるほど、そこに向かうための道筋も見えやすくなります。
3. 目標達成のために、お互いの価値観を「活かす」「譲り合う」
共通の目標を設定したら、その目標達成のために、お互いの価値観をどう調整していくかを話し合います。完全に価値観を一致させる必要はありません。
- (例:一方が節約が得意、もう一方が情報収集が得意な場合)
- 節約が得意な方が、毎月の支出管理や無駄削減のアイデアを出し合う役割を担う。
- 情報収集が得意な方が、効果的な貯蓄方法や資産運用について調べる役割を担う。
- このように、お互いの得意分野を活かすことができます。
- (例:一方が今使いたい、もう一方が将来のために貯めたい場合)
- 「共通目標のために、毎月〇円は必ず貯蓄に回す」というルールを決める。
- 残ったお金の中で、「今楽しむためのお金」「将来のための自己投資」など、それぞれが納得できる使い方のバランスを見つける。
- お互いが少しずつ譲り合い、納得できる「夫婦のルール」を作ることが重要です。
話し合いを通じて決めた目標やルールは、可能であれば書き出しておくと、夫婦で共有しやすくなります。
続けるための工夫と見直し
一度話し合って共通目標を設定しても、それで終わりではありません。生活状況や価値観は変化していくものです。定期的に話し合いの機会を持ち、目標や進捗状況を確認し、必要に応じて見直していくことが大切です。
夫婦でお金について話し合うことは、単に家計を管理するためだけでなく、お互いの考えや将来への希望を共有し、理解を深める貴重な機会となります。価値観の違いを乗り越え、夫婦で力を合わせて目標に向かうプロセスは、夫婦関係の信頼をより強固なものにしてくれるでしょう。少しずつでも良いので、今日から話し合いを始めてみてはいかがでしょうか。