お金の話で夫婦が感情的にならないための話し方と心得
夫婦でお金の話をする際に感情的になりやすい背景
夫婦の間でお金の話をすることは、将来への漠然とした不安を解消し、共に歩む上で非常に大切です。しかし、お金の話となると感情的になってしまったり、ついお互いを責めてしまったりして、話し合いが難航するという経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
なぜ、お金の話で感情的になりやすいのでしょうか。そこには、育ってきた環境や価値観の違い、お金に対する過去の経験、そして将来への不安が複雑に絡み合っていることがあります。お金は生活の基盤に関わることなので、その話題に触れることは、自分自身の生き方や価値観を問われているように感じたり、コントロールを失うことへの恐れを感じたりする場合があるからです。
感情的な話し合いは、問題の解決を遠ざけ、夫婦関係に溝を作る可能性もあります。ここでは、感情的にならずに、お互いを尊重しながらお金について話し合うための方法と、話し合いを始めるにあたっての心構えをご紹介いたします。
感情的にならないための話し合いの心得
お金について話し合うことは、お互いを攻撃することではなく、より良い未来を二人で築くための共同作業であるという認識を持つことが重要です。話し合いを始める前に、いくつか心に留めておきたい点があります。
まず、完璧を目指さないことです。一度の話し合いで全てが解決するわけではありません。大切なのは、対話を始める一歩を踏み出し、継続することです。小さなことから始め、お互いの状況や考えを知ることから始めましょう。
次に、「責める」のではなく「協力する」という姿勢を大切にしてください。お金に関する問題は、どちらか一方の責任であることは稀です。二人で協力して現状を理解し、改善策を見つけ出すという共通の目標を持つことで、感情的になりにくくなります。例えば、「なんでこんなに使ったの?」ではなく、「どうしたらこの支出を抑えられるか、一緒に考えてみない?」というように、協力的な言葉を選ぶように意識しましょう。
また、話し合いの目的を夫婦で共有することも有効です。「将来のために、今の家計の状況を把握したい」「教育資金を貯めるために、具体的な目標を立てたい」など、具体的な目的を共有することで、感情論に陥らず、建設的な話し合いに進みやすくなります。
穏やかな話し方の具体的なコツ
では、実際に話し合いをする際に、どのように話せば感情的にならずに済むのでしょうか。いくつか具体的なコツがあります。
1. 「私は」を主語にする(Iメッセージ)
相手を非難するような「あなたは〜だ」という言葉遣いは避け、「私は〜と感じる」「私は〜と考えている」というように、自分の気持ちや考えを主語にして伝えましょう。 例えば、「あなたはいつも無駄遣いばかりだ」と言う代わりに、「私は、将来の貯蓄について少し不安を感じています」と伝えると、相手は責められていると感じにくく、耳を傾けやすくなります。
2. 具体的に話す
抽象的な不満(例:「もっとちゃんと節約してよ」)は、相手にどうすれば良いか伝わらず、反発を招きやすいものです。具体的に、どのような状況で、何について話し合いたいのかを明確に伝えましょう。 例えば、「毎月の食費が少し多いように感じているのだけど、この部分について一緒に見直す時間は取れないかな?」のように、具体的な事柄に絞って話すと、相手も状況を把握しやすくなります。
3. 相手の発言を遮らない
相手が話している途中で口を挟まず、最後まで耳を傾ける姿勢を見せることが大切です。これにより、相手は「自分の話をちゃんと聞いてもらえている」と感じ、安心して話すことができます。自分が話したいことがあっても、まずは相手の話を聞き終えてから、落ち着いて自分の意見を伝えましょう。
相手に聞く姿勢を示す方法
話し方だけでなく、相手の意見を聞く姿勢も感情的にならない話し合いには不可欠です。
1. 傾聴と相槌
相手の話をただ聞くだけでなく、理解しようと努める「傾聴」の姿勢を持ちましょう。適度に相槌を打ったり、「なるほど」「そうなんですね」と反応したりすることで、相手は話しやすくなります。
2. 理解できない点は質問する
相手の言っていることの意味が分からなかったり、意図が掴めなかったりする場合は、憶測で判断せず、丁寧に質問して確認しましょう。「すみません、〜ということでしょうか?」「もう少し詳しく教えていただけますか?」と尋ねることで、誤解を防ぎ、お互いの理解を深めることができます。
3. 相手の意見を一度受け止める
たとえ自分の意見と異なっていても、まずは相手の意見を「一度受け止める」姿勢が大切です。「〜という考え方もあるのですね」「あなたがそう感じる理由、少し分かった気がします」といった言葉で、相手の意見や感情を否定しない姿勢を示しましょう。その上で、自分の考えを落ち着いて伝えるようにします。
感情的になりかけた時の対処法
話し合いが進む中で、やはり感情的になってしまいそうな瞬間があるかもしれません。そのような時にも、冷静さを保つための対処法を知っておくことが重要です。
1. 一度中断を提案する
感情的になりそうだと感じたら、無理に話し合いを続けようとせず、一時中断を提案しましょう。「ごめん、少し冷静になりたいから、一度休憩して、また後で話せないかな?」のように伝えます。休憩時間を設けることで、お互いにクールダウンする時間を持つことができます。
2. 場所を変える、深呼吸をする
話し合いの場から一度離れて、別の部屋に行ったり、外の空気を吸ったりするのも有効です。深呼吸を数回行うだけでも、気持ちが落ち着くことがあります。
3. 冷静になってから再開する約束をする
中断する際に、「今日の夜にでも、改めてこの話の続きをしようね」というように、話し合いを再開する具体的な約束をしておくと、相手も安心できます。再開時には、先ほど感情的になってしまったことについて、可能であればお互いを労う言葉を交わすのも良いかもしれません。
具体的な話し合いの内容の例と場の設定
では、具体的にどのような内容から話し合うのが良いでしょうか。最初は、お互いの感情が動きにくい「現状の把握」から始めるのがおすすめです。
- 現状の把握: 毎月の収入額、固定費(住宅ローン、光熱費、通信費など)、変動費(食費、交際費など)の概算、現在の貯蓄額などを共有します。家計簿アプリや表計算ソフトなどを活用し、客観的な数字を見ることから始めると、感情論になりにくいでしょう。
- 将来のライフイベントにかかる費用: 子供の教育費、マイホーム購入、車の買い替え、自分たちの老後資金など、将来起こりうるライフイベントにはどのくらい費用がかかるのか、概算で情報収集し、共有します。具体的な金額を知ることで、漠然とした不安が少し和らぎ、「そのためにはどうすれば良いか」という建設的な議論に進みやすくなります。
- お互いのお金に関する価値観: 何にお金を使うのが好きか、何にお金をかけることに価値を感じるか、お金を使う上での譲れないポイントなど、お互いの価値観を伝え合います。価値観の違いを知ることは、相手の行動を理解する上で役立ちます。
これらの話し合いは、お互いがリラックスできる環境で行うことが望ましいです。 静かで落ち着けるリビングなどで、飲み物でも用意しながら、テレビを消して行うなど、話し合いに集中できる雰囲気を作りましょう。また、「今日は30分だけ話そう」のように、あらかじめ時間制限を決めておくのも、だらだらと続いたり、疲れて感情的になったりするのを防ぐのに有効です。
まとめ
夫婦でお金について感情的にならずに話し合うことは、容易ではないかもしれません。しかし、今回ご紹介した「私はメッセージ」や「具体的に話す」といった話し方のコツ、相手の話に耳を傾ける姿勢、感情的になりそうな時の対処法、そして話し合いの場の設定などを意識し、実践していくことで、徐々にお互いを尊重した対話ができるようになります。
最初はうまくいかないこともあるでしょう。それでも、諦めずに小さな一歩から始め、話し合いを続けることが大切です。感情的にならない話し合いは、将来への漠然とした不安を具体的に把握し、共に解決策を見出す助けとなるだけでなく、夫婦間の信頼関係をより一層深めることにも繋がります。
お金の話は、二人の将来を共に考えるための大切なコミュニケーションです。ぜひ、できることから試してみてください。