夫婦で安心!お互いの資産・負債をリストアップして共有する話し合い方
夫婦でお金の話をすることに、どこかハードルを感じている方は少なくないかもしれません。将来への漠然とした不安は、多くの場合、「見えない」ことから生まれます。自分たちのお金が今どうなっているのか、全体像が掴めないことが、その不安を大きくしてしまう一因です。
お金の全体像を把握する第一歩として、夫婦がお互いの資産と負債をリストアップし、共有することは非常に有効です。これは、どちらかの「持ち物」を詮索するのではなく、夫婦という一つの単位として、現在どのような経済状況にあるかを客観的に理解するための大切な作業です。
なぜ、夫婦で資産・負債のリストアップが必要なのか
夫婦で資産と負債をリストアップし、共有することには、いくつかの重要な理由があります。
まず、お互いがどのような経済状況にあるかを正確に知ることで、漠然とした不安を具体的な事実に基づいたものに変えることができます。「こんなにある」「これだけ必要」といった現実が見えることで、次に取るべき行動が明確になります。
次に、将来のライフイベントに向けた計画を立てやすくなります。住宅購入、子どもの教育費、自分たちの老後資金など、大きなお金を必要とするイベントに対して、現在の資産状況を踏まえて、いつまでにいくら貯める必要があるのか、具体的な目標設定が可能になります。
さらに、予測できない「万が一」の事態への備えにもつながります。もし夫婦のどちらかに何かがあった場合、残された側がお金の状況を把握していないと、手続きや生活に困窮する可能性があります。事前に情報を共有しておくことは、家族を守る上で非常に重要な意味を持ちます。
リストアップする具体的な項目
夫婦でリストアップする資産と負債には、様々な種類があります。まずは、以下の項目を参考に、思いつくものを書き出してみることから始めましょう。
【資産の部】
- 預貯金: 普通預金、定期預金、外貨預金など。銀行名や支店名、口座番号、現在の残高などをまとめておくと良いでしょう。
- 保険: 生命保険、医療保険、学資保険、個人年金保険など。保険会社名、商品名、契約者、被保険者、受取人、毎月の保険料、解約返戻金(現時点または特定の時点)などを整理します。
- 有価証券: 株式、投資信託、債券、つみたてNISA、iDeCoなど。金融機関名、銘柄、保有数、現在の評価額などをまとめます。
- 不動産: 持ち家、投資用不動産など。所在地、評価額(固定資産税評価額など)、登記情報などを整理します。
- その他: 退職金見込み額、企業型DC、貸付金など。
【負債の部】
- 住宅ローン: 金融機関名、借入額、残高、返済期間、毎月の返済額、金利タイプなどを整理します。
- 自動車ローン: 金融機関名、借入額、残高、返済期間、毎月の返済額などを整理します。
- 奨学金: 借入先、残高、返済条件などを整理します。
- その他: クレジットカードの分割払い・リボ払い残高、個人間の借入など。
これらの項目全てを一度に完璧に洗い出すのは難しいかもしれません。まずは把握できている範囲から始めるのが良いでしょう。重要なのは、お互いが持っているお金や借金の「全体像」を、リストという形で見える化することです。
リスト作成と共有のためのステップと話し合いのコツ
夫婦で資産・負債リストを共有するための具体的なステップと、話し合いを円滑に進めるためのコツをご紹介します。
ステップ1:話し合いの場を設定する
お互いがリラックスでき、落ち着いて話せる時間と場所を選びましょう。休日のお昼や、子どもが寝静まった後など、夫婦でじっくり向き合える時間を作ることが大切です。食事をしながら、またはお茶を飲みながらなど、堅苦しくない雰囲気を作るのも良い方法です。
ステップ2:なぜこれをするのか、目的を共有する
話し合いを始める前に、「どうして今、この話をしたいのか」という目的を伝えましょう。「将来のお金のことを一緒に考えて、漠然とした不安をなくしたい」「お互いが安心できるように、今の状況を知っておきたい」など、前向きな理由を伝えることが大切です。
- 会話例: 「ねえ、最近、将来のお金のことが少し気になってて。漠然とした不安を減らすために、一度、お互いが今どんなお金を持っているか、どんな借金があるか、一緒に整理してみないかな。どこかに向かうためにも、まず現在地を知っておきたいんだ。」
ステップ3:各自が把握している範囲でリストアップしてみる
すぐに完璧なリストを作る必要はありません。まずは、各自が自分の名義で持っている資産や負債について、把握できている範囲で良いので、ノートやスマートフォンのメモ機能などに書き出してみましょう。通帳や保険証券、ローン契約書などを手元に置いて作業すると効率的です。
ステップ4:リストを持ち寄り、互いに共有する
各自が作成したリストを持ち寄り、交換したり、一緒に見たりしながら共有します。まずは、相手が書き出したリストをじっくりと見て、どんなものがあるのかを把握することから始めましょう。
ステップ5:不明な点や疑問点を感情的にならずに確認し合う
リストを見ながら、分からないことや疑問に思ったことを質問します。この時、「なぜこんなものがあるの?」といった問い詰めたり、非難するような言い方にならないよう注意が必要です。「これはどういう内容の保険なの?」「このローンはあとどれくらいで終わるんだっけ?」のように、情報共有を求めるスタンスで質問しましょう。
- 会話例: (相手のリストを見て)「この○○保険って、前に話してたものかな?どんな時に出る保険だったっけ?」 (相手のリストを見て)「ここに書いてある投資信託、いつからやってるの?最近の調子はどう?」
ステップ6:共有リストを作成する
お互いの情報を持ち寄り、一つの共有リストを作成します。エクセルやGoogleスプレッドシートなどの表計算ソフトを使うと、後からの修正や集計がしやすく便利です。手書きのノートでも十分に機能します。リストは、お互いがいつでも見られる場所に保管するか、クラウド上で共有できるようにしておくと良いでしょう。
ステップ7:定期的に見直す計画を立てる
お金の状況は常に変動します。一度リストを作成したら終わりではなく、半年に一度や一年に一度など、定期的に見直すタイミングを決めておくと良いでしょう。見直しの時間を設けることで、計画通りに進んでいるかの確認や、新たな状況の変化に対応することができます。
話し合いを成功させるための追加のコツ
- 完璧を目指さない: 最初から全ての情報を網羅しようとせず、まずは分かる範囲で構いません。リストは作成後も更新できます。
- お互いを尊重する: 相手のお金の使い方や考え方に違和感があっても、すぐに批判せず、「なぜそう考えたのか」を聞いてみましょう。価値観の違いを理解する機会と捉えます。
- 小さなことから始める: 全ての資産・負債を一度にリストアップするのが大変なら、まずは「預貯金だけ」「保険だけ」など、項目を絞って始めてみるのも有効です。
- 感情的になりそうになったら休憩を: 話し合いが白熱し、感情的になりそうだと感じたら、「少し休憩しようか」「続きはまた明日話そう」などと提案し、クールダウンする時間を持ちましょう。
まとめ
夫婦でお互いの資産と負債をリストアップし、共有することは、現在の家計状況を「見える化」し、将来への具体的な一歩を踏み出すための重要なプロセスです。この作業を通じて、漠然とした不安は和らぎ、夫婦がお金について同じ認識を持つことで、協力して未来を築いていくための信頼関係がより一層深まることでしょう。
最初から完璧でなくても大丈夫です。まずは、夫婦で話し合う時間を持つこと、そして、お互いの状況を知ろうとする気持ちを持つことが何よりも大切です。このリスト作成と共有が、夫婦で力を合わせ、安心して将来を歩むための確かな一歩となることを願っています。