将来の安心につながる 夫婦で語り合う「万が一」の備え
将来に対して漠然とした不安を感じていらっしゃる方は少なくないでしょう。特に、夫婦どちらかの収入が途絶えたり、大きな病気をしたりといった「万が一」の事態については、考えたくない、あるいはどう考えたら良いか分からないと感じるかもしれません。
しかし、こうした不測の事態について、夫婦で一度しっかりと話し合っておくことは、漠然とした不安を具体的に整理し、いざという時に落ち着いて対処するための基盤となります。また、お互いの考えや準備状況を共有することで、夫婦の信頼関係をより一層深めることにもつながります。
この記事では、夫婦で「万が一」のお金についてどのように話し合いを始め、何を話し合うべきか、そしてその話し合いを安心できるものにするためのヒントをご紹介いたします。
なぜ今、「万が一」のお金について話し合う必要があるのか
人生には予測できない出来事が起こり得ます。病気や怪我による長期療養、会社の業績悪化に伴う失業、予期せぬ災害など、家計を揺るがす事態は誰の身にも起こりうる可能性があります。
こうした「万が一」の事態に備えておくことは、単にお金を貯めることだけを意味するのではありません。それは、不安な状況下でも冷静な判断ができる精神的な余裕を生み、家族の生活を守るための具体的な行動計画を立てておくことです。
そして、この備えは、夫婦二人で認識を共有し、協力して築き上げていくことが非常に重要です。一人で抱え込まず、二人で話し合うことで、より現実的で効果的な備えが可能になります。
夫婦で「万が一」のお金について話し合うための第一歩
1. 話し合いのきっかけを見つける
「万が一」の話は、普段の会話ではなかなか切り出しにくいテーマかもしれません。しかし、重々しく考えすぎず、日常生活の中やニュースなどから自然な流れで話題を始めることができます。
例えば、 * 「最近、〇〇さんの話を聞いて、もしもの時のお金のこと、私たちも少し考えておいた方がいいかなと思って。」(知人の話やニュースをきっかけに) * 「保険の書類を見直していたら、保障内容がよく分からなくて。ついでに、もしもの時の備えについて二人で確認してみない?」 * 「今度、保険の話を聞きに行く機会があるんだけど、その前に私たちでどんなことに備えたいか、簡単に話しておかない?」
のように、具体的な出来事や行動に結びつけて提案すると、相手も受け入れやすくなることがあります。
2. 話し合うテーマを具体的にする
「万が一」と一口に言っても、想定される事態は様々です。まずは、どのような状況を想定して備えを考えるのか、夫婦で共通認識を持つことから始めます。例えば、 * 夫婦どちらかが病気や怪我で長期間働けなくなった場合 * 夫婦どちらかが失業した場合 * 自宅が災害に遭った場合 * 想定される事態によって必要となるお金の種類や金額、期間は異なります。
3. 話し合う具体的な内容の例
話し合いをスムーズに進めるために、事前に簡単なリストを作成しておくと良いでしょう。
- 現在の生活費の確認: 万が一、収入が減った場合に、最低限必要な生活費はいくらか。家計簿などを参考に、毎月の支出項目を確認します。
- 現在の貯蓄額と置き場所の確認: 現在、どのくらいの貯蓄があるか、それがどこにあるのか(普通預金、定期預金、証券口座など)を共有します。すぐに引き出せるお金と、そうでないお金を把握します。
- 公的な制度や会社の保障の確認: 病気や失業の場合に利用できる公的な制度(健康保険の高額療養費制度、傷病手当金、雇用保険の失業給付など)や、会社の福利厚生、加入している保険の内容(生命保険、医療保険、就業不能保険など)を確認します。これらの保障でどこまでカバーできるかを知ることは、必要な備えの金額を考える上で重要です。
- 不足する金額の目安を立てる: 最低限必要な生活費、想定される医療費などを踏まえ、公的な制度や保険でカバーできない部分について、どのくらいの期間、いくら必要になりそうか目安を立ててみます。例えば、「夫の収入が半年間途絶えた場合、毎月〇〇円の生活費が必要で、保険等で△△円カバーできるとすると、月に□□円、半年で合計◎◎円が不足しそうだ」のように具体的に考えます。
- 必要な備えの目標額と準備方法: 不足しそうな金額の目安に基づき、具体的な備えの目標額を決めます。そして、その目標額をどのように準備していくか(毎月の貯蓄額を増やす、保険を見直す、資産の一部を流動性の高いものに移すなど)を話し合います。
話し合いを安心できるものにするためのヒント
- 責めない、批判しない: 万が一の話はデリケートです。「なぜ〇〇していないの?」といった責める口調ではなく、「一緒に〇〇について考えてみない?」という協力的な姿勢で臨みます。
- まずは聞く: 相手の不安や考えをまずはしっかりと聞きます。遮らず、相手の言葉に耳を傾けることで、安心感が生まれます。
- 一度で全てを決めようとしない: 万が一の備えは、一度話しただけで全てが解決するものではありません。定期的に(例えば半年に一度など)話し合いの機会を持つことを計画します。
- 感情的になったら休憩する: 話が思わぬ方向に進んだり、感情的になりそうになったりしたら、無理せず一旦休憩を挟みます。「少し休憩しようか」「落ち着いてからまた話そう」などと声をかけ、クールダウンする時間を作ります。
- リラックスできる環境を作る: 落ち着いて話せる時間帯や場所を選びます。自宅のリビングや近所のカフェなど、リラックスできる雰囲気を作ることも大切です。飲み物を用意するなど、話しやすい環境を整えましょう。
まとめ
夫婦で「万が一」のお金について話し合うことは、不安を煽る行為ではなく、むしろ将来への安心感を築くための前向きなステップです。二人で現実に向き合い、情報や考えを共有することで、具体的な備えが見えてきます。
完璧な答えや解決策を一度に見つけようとする必要はありません。今日、このテーマについて夫婦で少しだけ言葉を交わすことから始めてみてください。その一歩が、夫婦の絆を深め、より確かな将来を築くための土台となるはずです。