漠然としたお金の不安を夫婦で具体的にリストアップする方法
夫婦でお金の話をすることに、ためらいを感じている方は少なくないかもしれません。特に、将来に対する漠然とした不安がある場合、どこから話せば良いのか分からず、時間が過ぎてしまうこともあるかと思います。しかし、その漠然とした不安こそが、夫婦でお金について向き合うための大切な出発点になり得ます。
漠然とした不安を具体的にする理由
なぜ、漠然とした不安を具体的な言葉にする必要があるのでしょうか。漠然としている状態では、何が問題なのか、何から手をつければ良いのかが明確になりません。まるで濃い霧の中にいるように、立ちすくんでしまうだけです。これを具体的にリストアップすることで、不安の正体が明らかになり、取るべき行動が見えてきます。これは、問題解決の第一歩であり、夫婦で同じ課題を共有するための重要なプロセスです。
不安を具体的にリストアップするステップ
夫婦で不安をリストアップする作業は、最初から二人で始めようとすると、お互いの感じていることの違いから、かえって難しくなることもあります。まずは、ご自身が感じている不安を一人で書き出してみることから始めてはいかがでしょうか。
ステップ1:ご自身の不安を一人で書き出してみる
ノートやスマートフォンのメモ機能など、書きやすいものを用意してください。「お金に関して、漠然と不安に感じていること」「少し気になっていること」「本当は知りたいけど、まだ調べていないこと」などを自由に書き出してみましょう。
項目に迷う場合は、以下のような視点を参考にしてみてください。
- 現在の家計について: 毎月の収入と支出のバランスはどうなっているのだろうか。何にどれくらい使っているのか把握できていないかもしれない。貯金はできているのだろうか。
- 将来のライフイベントについて: 子どもの教育資金はいくらくらいかかるのだろうか。住宅購入やリフォームを考える時期が来るかもしれない。親の介護や自分たちの老後資金は大丈夫だろうか。
- 万が一の場合について: 夫(または妻)に何かあった場合、経済的にどうなるのだろうか。病気やケガで働けなくなった時の備えはあるのだろうか。
- 資産や負債について: 今どれくらいの貯金や資産があるのだろうか。住宅ローンや他の借入金はどれくらいあるのだろうか。
- 働き方や収入について: 今後の収入は維持できるのだろうか。働き方を変えることはあるのだろうか。
完璧である必要はありません。頭の中に浮かぶ不安を、思いつくままに書き出してみてください。
ステップ2:夫婦で話し合う場を設定する
ご自身が一人で書き出したリストを元に、夫婦で共有する時間を作りましょう。普段の生活の中で、落ち着いて話せる時間と場所を選ぶことが大切です。例えば、週末の午前中や、夕食後など、お互いにリラックスできる時間帯が良いでしょう。
「少し、将来のお金のことについて話したいんだけど、今週の土曜日、少し時間をもらえないかな」のように、具体的に提案してみます。話す内容を「漠然とした不安を整理したい」と伝えておくことで、相手も心の準備がしやすくなります。
ステップ3:お互いの不安を共有し、リストに加える
設定した時間になったら、二人でリストを共有する作業を行います。まずは、ご自身が書き出したリストを相手に見せながら、どのような不安を感じているのかを伝えてみましょう。この時、責めるような口調や感情的な表現は避け、「私は〜と感じている」「〜が少し気になっている」のように、自分の気持ちを伝えることに重点を置きます。
次に、相手が感じている不安についても尋ねてみましょう。相手が話している間は、遮らずに耳を傾けることが大切です。相手が話し終わったら、「〜ということかな?」のように、理解した内容を確認するのも良い方法です。相手が不安に思っていることを書き加え、夫婦共通の「不安リスト」を作成します。
例えば、このような会話が考えられます。
あなた:「あのね、少し前から将来のお金のことが気になっていて、漠然とした不安があるんだ。それで、一度書き出してみたんだけど、一緒に見てくれないかな」 夫(または妻):「うん、いいよ。どんなことが気になっているの?」 あなた:「いくつかあるんだけど、例えば、これから子どもの教育費がどれくらいかかるのか、具体的な金額が分からなくて少し心配なんだ。あと、私たち自身の老後資金が、今のペースで貯めていて足りるのかな、とか…」 夫(または妻):「なるほど。教育費は確かに気になるところだね。僕は、万が一、今の仕事ができなくなった時に、どうなるのかな、ということが頭の片隅にあるかな。保険とか、そういうことはあまり考えていないから。」 あなた:「そっか、そういう不安もあるんだね。それもリストに書き加えてみよう。」
このように、お互いの不安を正直に共有し、一つのリストにまとめていきます。
リストアップした不安を整理する
漠然とした不安を具体的にリストアップできたら、次はそれを整理する段階です。
- 分類する: リストアップした項目を、「現在の家計」「将来のライフイベント」「万が一の備え」などのカテゴリーに分類してみましょう。
- 優先順位をつける: 今すぐに考え始めるべきこと、情報収集が必要なこと、まだ先でも良いこと、などに優先順位をつけてみます。
- 「調べること」「話し合うこと」「専門家に相談すること」に分ける: それぞれの項目に対して、次の具体的なアクションを考えます。これは自分たちで調べれば分かることなのか、二人で話し合って決めなければならないことなのか、専門家(ファイナンシャルプランナーなど)に相談すべきことなのかを整理します。
例えば、「子どもの教育費」という不安は、「まずはインターネットや書籍で平均的な費用を調べる」「次に、いつまでにいくら必要か、具体的な目標額を夫婦で話し合う」といった具体的なアクションに繋がります。「万が一の備え」であれば、「現在の保険の加入状況を確認する」「必要であれば専門家に相談する」といった流れになります。
リストを次のステップへ活かす
不安を具体的にし、整理する作業は、それ自体が目的ではありません。これは、夫婦で将来のお金について具体的に話し合い、共通の目標設定や計画立案へと進むための重要な準備段階です。リストアップした不安を元に、今後の話し合いのテーマを決めていきます。
例えば、「老後資金が足りるか不安」という項目があれば、「夫婦で考える老後資金に必要な金額は?」「毎月いくら貯蓄すれば良いか?」といった具体的なテーマで話し合いを深めることができます。「家計の支出が把握できていない」という項目があれば、「夫婦で家計簿をつける方法について話し合う」「支出を見直すには?」といったテーマに進むでしょう。
漠然とした不安を一つ一つ具体的にし、夫婦で共有するプロセスは、不安を和らげるだけでなく、お互いの価値観や考え方を理解し、夫婦の信頼関係を深めることにも繋がります。
まとめ
夫婦がお金について漠然とした不安を抱えている場合、その不安を具体的にリストアップすることが、前向きな話し合いを始めるための有効な第一歩となります。一人で書き出し、夫婦で共有し、整理する。このプロセスを通じて、漠然としていた不安が明確になり、次に取るべき具体的な行動が見えてきます。
不安をリストアップする作業は、夫婦で未来について語り合い、共通の認識を持つための大切な機会です。完璧を目指すのではなく、まずは気になっていることから始め、一歩ずつ進んでいくことが重要です。このリストが、夫婦で将来への安心を着実に築いていくための一助となれば幸いです。